長久手の家
2012.6
歴史的なコンテクストを、全くと言っていいほど持ち合わせていない新興住宅街のど真ん中に、このシンプルなガレージハウスは建っている。周囲の分譲地にはまさしく雨後の筍のように、次々と真新しい住宅が建てられているが、それらはお互いに関連性を感じさせない別々の、そして没個性的な意匠を纏っている。
その様な住宅街の視覚的に目立つ重要な一角にこの住宅をデザインするにあたり、いつもの通り壁を立ててプライバシーを確保する所から計画を始めた。密接する建物と建物の間に残された狭く薄暗い庭では、住宅にとって重視すべきプライバシーを生み出す事は適わず、建物と一体化した外構計画により美しい街並みを生み出して行く事も難しい。
御幸山と同じく南側と西側の道路面に対して目隠しの為に壁を立てているが、南側の遊歩道に面した壁の足元には横長の開口部を穿っている。これは交通の量と質の違い、そして御幸山のように既に近隣とのコミュニケーションが確立されている土地に家を建てるか、これから確立して行くべき場所であるかの違いによるものである。ちょっと屈めば中を覗く事はできるが、良識のある人達はまずその様な行動は取らない。この開口部は近隣住民との会話の為のツールとなるだろう。
箱型のシンプルな設計ではボリュームの扱い方に気を遣わなくては、時として威圧的で尊大な印象を与えてしまう。周囲に埋没しないような品のある存在感を保ちつつ、近隣住宅とのスケール感のバランスを取るようにボリュームを分節し、壁の高さや配置を調整した。